あの日、妻の信号は青色だった。

司法に葬られた福井衝突事故の謎


著者 山﨑義一
発売 2025年5月17日

判型 A5サイズ(176ページ)
仕様 ペーパーバック

定価 1,540円(税込)


わずか1日で作り上げられた
矛盾だらけの調書が、
妻を「加害者」に追いやった——。

〝決定的な証拠〞がない交通事故の理不尽すぎる結末。

福井で発生した衝突事故の不自然な捜査と経緯。
これが地方の警察、裁判所の〝常識〞なのか——。

司法や捜査機関の都合にふりまわされる妻を、
傍聴席から見守ることしかできない夫の苦悩と憤りが
交通事故の実態を、烈火のごとくあぶり出す!


本文より

◆「序章」より抜粋

実際に、事故の発生直後から妻本人の証言とはまったく異なる信号の色や走行ルートが、捜査機関の「捜査なき決めつけ」によって、すべて「事実」にされてしまいました。

その結果、事故の当事者である妻と事故相手が負う〝3つの責任(処分)〞も次のようなチグハグな結末を迎えています。

刑事=双方が不起訴。
行政=双方が信号無視。
民事=妻の過失が10割(事故相手は過失なし)。

刑事、行政については、喧嘩両成敗のごとく、双方が痛み分けをするかたちで終わりましたが、なぜか民事では妻が一方的に「加害者」に仕立て上げられてしまい、裁判官も妻の言い分に耳を傾けることはありませんでした。

◆「第1章」より抜粋

調書1の見取図は事故相手K氏の主張に沿ってまとめられたものだが、衝突位置は妻の主張とは大きく異なっている。

今回の衝突事故は出会い頭のはずだが、双方が主張する衝突位置には「約5メートル」のずれがある。あくまでもK氏の主張がベースなので、このような〝誤差〞が生じる可能性はあるかもしれないが、私にはどうしても腑に落ちないことがある。

それは、この〝誤差〞について、具体的な捜査をした痕跡がどこにもない点だ。

K氏の実況見分は「事故当日(直後)」におこなわれている。そのため、実況見分のときにはK氏が主張する衝突位置の付近には、事故車両から落下したパーツの一部や破片などが路面に残っているはずだが、それらに関する記録(現場写真や記述)はいっさいない。

明らかに不自然な調書だと思った私は、南署の担当者にそのことを問いただした。

すると担当者は自信満々にこう答えた。
「実況見分調書に衝突位置の写真はいらない。停止位置の写真しか撮らない」
これが福井県警の捜査方針なんだろうか……。

この時点で衝突位置を明確にしなかった(できなかった)のは、捜査機関にとって大きな〝捜査ミス〞といえるだろう。


もくじ

序章 心の後遺症
・交通事故の一報
・警察官の怒声
・理不尽な捜査
・動かぬ証拠

当時の画像で振り返る
・交通事故の概要1 事故現場
・交通事故の概要2 事故車両

第1章 実況見分調書
・実況見分は任意
・謎の調書
・調書1 衝突地点が5メートルも違う
・調書2 K氏は交差点の南側から進入
・調書3 目撃者の位置
・調書4 福井地検が再捜査を指示

第2章 妻の証言
・最大の争点「走行ルート」
・妻の主尋問
・妻の反対尋問

第3章 事故相手
・初対面
・事故時の証言
・K氏の陳述書

第4章 目撃者
・教え子
・調書3の疑問点
・証言が二転三転
・メモと調書の違い
・後日談

第5章 警察と保険会社
・調書の日付が違う
・日記が証拠品に
・診断書の受け取り拒否
・目撃者探しの電柱幕とチラシ
・警察官スクラム
・過失割合の変遷

第6章 検察と行政処分
・不起訴処分の類型
・検察審査会
・双方が赤信号無視
・交通事故の時効が完成

第7章 弁護士
・意見書
・目撃者との通話
・自動車会社の見解
・文書偽造の時効

第8章 裁判
・尋問の回数
・一審での和解勧告
・謎の交通量調査
・一審判決のポイント
・2回で終わった高裁
・最高裁からの通知
・裁判の結果

終章 妻への想い
・乳がんが転移
・やりきれない気持ち

巻末資料
・交通事故年表


著者プロフィール

山﨑義一(やまざき・ぎいち)

兼業農家。1946年5月、福井県福井市に生まれ現在に至る。高校卒業後、当時の福井市企業局に定年まで勤務。主に維持管理作業に従事。定年後は親のあとを継ぎ、わずかな水田畑の耕作、時間をみては妻の残したプランターの手入れをしている。


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